神保町の交差点

●年初、2017年に刊行した書籍を紹介したいと思います。
 2017年1月、外務省経済局編『我が国の経済外交2017』でスタート。外務省では『外交青書』を刊行していますが、経済局の新しい試みとして始まりました。これまで「もはや戦後ではない」で知られる『経済白書』の復刻を出してきましたがこれは新しい企画です。書店の反応もよく注文が集まり、気をよくします。小西宏美著『グローバル資金管理と直接投資』、南山の経済学ブックレット⑦山田正次著『アメリカに振り回される日本の貿易政策』は南山大学経済学部におられた川崎勝先生を中心に始まった企画です。柳澤治先生がまとめられた研究成果の三弾目『ナチス・ドイツと中間層』、八木紀一郎他編著『欧州統合と社会経済イノベーション』を刊行。新刊五点にテキスト注文が例年に比べて増え、良い年の始まり。
 2月、超繁忙期に突入。友田昌宏編著『東北の近代と自由民権』は考え抜いた部数で刊行したが、あっさりと2か月後に増刷、部数設定の難しさをあらためて痛感。伊藤維年編著『グローカル時代の地域研究』、田中英明著『信用機構の政治経済学』、西垣泰幸編著『地方分権と政策評価』、佐藤元英著『経済制裁と戦争決断』、この本は新聞の書評にも取り上げられ話題になり書店でも賑わった。柴田善雅著『満洲における政府系企業集団』、ここで742頁の大作を終え一息。この月で編集の鴇田が新天地岡山県に移住、新刊6点。増刷一点。
 3月、怒濤の追い込み。鈴木茂著『イギリスの都市再生とサイエンスパーク』、井奥成彦編著『時代を超えた経営者たち』は革新的な経営に取り組み、発展させてきた経営者を取り上げました。高瀬雅男著『反トラスト法と協同組合』は「協同組合のための独禁法適用除外」をテーマに20数年、ようやくゴールに辿りついた労作です。荻野富士夫・兒嶋俊郎・江田憲治・松村高夫著『「満州国」における抵抗と弾圧』、著者である江頭進先生とのご縁で、小樽商科大学出版会の刊行物が任された第一弾。編集谷口の最後の仕事となった、榎本珠良編著『国際政治史における軍縮と軍備管理』は明治大学国際武器移転史研究所研究叢書第二弾、このシリーズはこれからも続きます。小川功著『非日常の観光社会学』、葛西リサ著『母子世帯の居住貧困』は世の反響に驚かされた本です。祝二か月後増刷決定。高崎経済大学地域科学研究所編『地方製造業の展開』は1987年『群馬からみた先端技術と産業構造の変容』から始まり30年余41冊目となる。新刊八点、年度末を終えここで一息つく。
 四月、新年度が始まり小社の決算まで残り1か月、妙にプレッシャーを感じる。渡瀬義男著『中江兆民と財政民主主義』。相沢幸悦著『「アベノミクス」の正体』はテキスト採用を目的に刊行、半年足らずで1500部が完売し驚く、新刊2点、来期の新刊予定表をながめるとまだ新企画の余地があることに気づく。セッセと先生に会わねば。
 5月、社の年度始まり、気合いを入れ仕事に取り組む。バリー・ブザン著・大中真他訳『英国学派入門』、大倉喜八郎述・菊池暁汀編纂、東京経済大学史料委員会編集『致富の鍵』は東京経済大学史料室に在職する永山和彦先生のご縁で発売のみを請け負うことに。新しい企画と新刊一点。
 6月、陽気は初夏、両手を広げて深呼吸。森原康仁著『アメリカIT産業のサービス化』、新刊一点増刷一点、種蒔きすれども芽が出てこない。初夏はのんびりと生育は遅い。
 7月、じわりじわり暑さが身にしみる。会社設立以来初の新刊ゼロ月をつくってしまった。じわりじわりと顔が青くなる。でも大丈夫と自分に言い聞かせる。
 8月、夏本番。赤澤史朗・北河賢三他編著『触発する歴史学』は民衆思想史、女性史、沖縄思想史などに取りくみ、多くの読者を惹きつけた鹿野政直。その著作に触発された研究者たちの鹿野思想史論です。根井雅弘著『アダム・スミスの影』は「経済学の父」アダム・スミスは、真に理解されているのか、「市場原理主義」だけではないスミスの姿をとおして、現代経済学への含意を考える。新刊二点。
 9月、武田晴人著『鈴木商店の経営破綻』、この本の刊行を機に出遅れた後半戦の狼煙をあげる。新刊一点増刷一点。
 10月、高木侃著『写真で読む三くだり半』、離縁状の写真を多く掲載した反響か、2か月後祝増刷、これには著者も驚く。武田晴人著『異端の試み』、先生方からよく出したとお褒めのお言葉をいただく。奥田宏司著『国際通貨体制の動向』、犬丸淳著『自治体破綻の財政学』、新刊四点。
 11月、杉本貴志編『格差社会への対抗』とは「一億総中流」が崩壊し、日本の格差が広がっていることへの警鈴。L・L・パシネッティ著・渡会勝義監訳PK叢書39 『ケインズとケンブリッジのケインジアン』、新刊2二点。
 12月、比較家族史学会監修『出会いと結婚』、西垣泰幸著『地域間ヤードスティック競争の経済学』、牧野裕他編『複合危機』、新刊3点、年度末にむけ皆が肩を回す。 (僅)