明治日本の文明言説とその変容

明治日本の文明言説とその変容

内容紹介

東アジアの中華思想支配、「文」を中心とする伝統的な文明概念と近代西洋の文明理解との融合と齟齬による、明治日本のアジア進出と植民地統治を中心に描く。

目次

凡  例 
序 章 近代東アジアにおける〈文明〉概念の錯綜
 1 課題と方法 
 (1)「文明」認識の推移と多義性 
 (2)イデオロギーと実体統治の間に遊離する文明言説 
 2 先行研究の検討 
  (1)明治史研究における文明化、近代化への評価/批判 
(2)植民地研究における帝国主義と「文明」「近代」概念の連帯性 
 3 本書の構成 
Ⅰ 明治期の文明理念の諸相
第1章 国家主義路線の文明観
 はじめに 
 1 明六社 
 (1)啓蒙思想の展開──文明社会の構築── 
 (2)品格のある学者と政府シンパの間 
 2 福沢諭吉の文明論 
 (1)「惑溺」批判──『文明論之概略』── 
 (2)西郷肯定の視座とその限界 
 まとめ 
第2章 反政府的文明言説の諸相
 はじめに
 1 「己れを利するは野蛮ぢゃ」──西郷隆盛の文明論──
 (1)文明開化への批判──『南洲翁遺訓』──
 (2)紙一重の連帯と侵略──西郷の継承者としての頭山満──
 2 国威宣伝と国家建設の間で──勝海舟の文明観──
 (1)連帯による対中国意識
 (2)仁政/法政──人民にとって「文明」の政法とは何か──
 3 文明と道義──中江兆民の文明観察──
 (1)西洋文明の暗黒面への認識
 (2)進化神の多様性と道義の普遍性──『三酔人経綸問答』──
 (3)文明の実現は「動物的天性」の克服──幸徳秋水の『帝国主義』──
 まとめ 
Ⅱ 膨脹と文明化の欲望
第3章 アジアを文明化する使命感──志賀重昂と内藤湖南の国粋主義──
 はじめに
 1 志賀重昂──西洋文明の内面化──
 (1)西洋に対する羨望と不信──南洋体験をめぐって──
 (2)「事大主義」への批判とその普遍化
 2 内藤湖南の東洋文明再興論
 (1)「黴菌を以て黴菌を除く」──西洋文明経由の中国改造論への批判──
 (2)陋習改革──経世家と「帝国主義」者の二つの顔──
 まとめ
第4章 植民地の文明化作業とその矛盾──後藤新平とその周辺──
 はじめに
 1 「比良目の目/鯛の目」──後藤新平の植民統治理念──
 (1)膨脹慾の固有性──『日本膨脹論』の論理──
 (2)民族差異を牙城とする植民政策
 2 立ち遅れた資本主義による理念と現実の乖離
 (1)『台湾協会会報』
 (2)未完の資本化──和文欄に反映された植民地統治者の現実──
 (3)日台合資と内地観光の表裏一体性
 (4)内的検閲と外的宣伝の混在──植民地の文明化に反映する植民者の自己認識──
 3 文明理念と植民イデオロギーの癒着──日本語教育の登場──
 (1)権威としての日本語
 (2)日本語教育の登場 
 まとめ 
第5章 台湾人紳士の「文明」への対応──『漢文台湾日日新報』の記事を中心に──
 はじめに 
 1 渇望/懐疑/反論──台湾人伝統知識人の文明認識──
 (1)漢詩における文明賛美
 (2)批判/懐疑
 2 断髪言説からみる植民地としての性格
 (1)日本維新期と清末中国の断髪運動における民族意識の再統合
 (2)〈保護色〉としての文明──植民地台湾の断髪言説──
 まとめ 
Ⅲ 帝国-植民地体制における〈文〉の意識と〈文明〉認識の融合と拮抗
第6章 植民地台湾における〈文〉と〈文明〉の乖離
    ──1900年「揚文会」を中心に──
 はじめに
 1 「揚文会」に潜む二つの虚文観──後藤新平と呉徳功をめぐって──
 (1)後藤新平演説の多義性
 (2)呉徳功の揚文理解
 2 「文」に対する台湾人紳士の執着──『台湾揚文会策議』をめぐって──
 (1)概観的認識──台湾在来社会の宗教状況──
 (2)庶民教化に関する士人階級的態度
 (3)「文」を大切にするこころ──「文明」概念と文廟、書籍、文字の一体化──
 まとめ
第7章 近代文体の形成における「伝統的」文体の変容
    ──漢詩文の自己相対化と再生──
 はじめに
 1 文体と国体の狭間で──日清戦争後の漢詩文意識の一端── 
 (1)漢文脈から「我文脈」へ──文体の置換および日本の主体性の浮上──
 (2)漢詩文の実体性と機能性の混乱──大江敬香を例として── 
 (3)和臭への自戒──「規範」を目指す自意識── 
 2 近代性と民族性の狭間で──1920年代植民地台湾の新旧文学論争──
 (1)張我軍と連雅堂の場合 
 (2)中仕切りとしての植民地体制 
 まとめ 
結  び 
参考文献 
初出一覧 
あとがき 
索  引