経済安全保障

経済安全保障

経済は安全保障にどのように利用されているのか

内容紹介

戦間期や冷戦期の事例、台頭する中国とアジア諸国の反応などを考察し、従来の国際政治経済学や安全保障論の死角を照射するとともに、新たな分析の枠組みを提示する。

目次

序章 研究の目的と手法
1.安全保障の手段としての経済
2.本研究の問題意識
3.分析の枠組み
4.本研究の構成

第1章 経済安全保障とは何か
1.経済安全保障の定義
2.経済安全保障の輪郭──「シグナル」から「誘導」まで──
3.類似概念との相違点
(1)経済制裁(economic sanctions)
(2)経済戦争(economic warfare)
(3)経済外交(economic diplomacy)
(4)経済ステイトクラフト(economic statecraft)
(5) 経済強制(economic coercion)、経済的刺激(economic inducements)
(6)マネーパワー(monetary power)
(7)対外経済政策(foreign economic policies)
(8)経済リンケージ(economic linkage)
(9)経済誘因(economic incentives)
(10)経済的関与(economic engagement)
(11)経済援助(economic aid)、対外援助(foreign aid)、経済協力(economic cooperation)
4.「安全保障」が意味するもの

第2章 経済安全保障の8つの戦略
1.従来の類型化──ポジティブかネガティブか──
2.新しい類型化──8つの戦略──
(1)シグナル(signal)──安全保障上重要なメッセージを伝えるための経済的手段
(2)強化(strengthening)──国家のパワーを維持・補強するための経済的手段
(3)封じ込め(containment)──敵対国を弱体化させるための経済的手段
(4)強制(coercion)──経済的損害を利用して相手を望ましい方向へ動かすための経済的手段
(5)買収(bribe)──経済的利益と引き換えに相手を望ましい方向へ動かすための経済的手段
(6)相殺(counterbalance)──経済的な悪影響を無効化するための経済的手段
(7)抽出(extraction)──安全保障上重要な富と資源を調達するための経済的依存の利用
(8)誘導(entrapment)──ターゲットの国益を変容させて迎合に導くための経済的依存の利用
3.経済繁栄について
4.経済安全保障の研究に伴ういくつかの問題
(1)戦略目的、ターゲットの重複
(2)因果関係の曖昧さ
(3)安全保障上の意図の曖昧さ
(4)効果の目立ちにくさ
5.経済安全保障研究の新機軸

第3章 中国の経済安全保障──中国・ASEAN自由貿易協定と人民元エリア──
はじめに
1.経済安全保障の分析枠組み──8つの戦略──
2.経済安全保障としての中国・ASEAN自由貿易協定
(1)ASEANの対中脅威感を鎮静化し、中国封じ込めを防ぐ(シグナル)
(2)安定的な代替市場を育成し、経済圧力によるダメージを緩和させる(相殺)
(3)CLMVへの影響力を高め、資源へのアクセスを確保する(強制・抽出・相殺)
(4)日米とASEANとの経済的な結びつきを弱める(相殺)
(5)インドの影響力がASEANに拡大することを防ぐ(相殺)
(6)台湾の影響力がASEANに拡大することを防ぎ、台湾を孤立させる(相殺・封じ込め)
(7)ASEANの国益を中国寄りに変容させ、全般的な対中迎合に導く(誘導)
3.経済安全保障の条件──中国・ASEAN自由貿易協定の場合──
(1)ASEANの輸出入に占める中国の割合を大幅に増大させる
(2)ASEAN諸国との間に「非対称依存」を構築する
(3)ASEANに「中国が代替国を見つけやすい一次産品」を輸出させ、「ASEANが代替国を見つけにくい工業製品」を輸入させる
(4)ASEAN側への十分な経済的利益の提供
(5)ASEAN経済統合の停滞、中国との二国間貿易の拡大
(6)ASEAN諸国の国内要因
4.経済安全保障としての人民元エリア
5.経済安全保障の条件──人民元エリアの場合──
おわりに

第4章 勢力均衡と経済安全保障──台頭する中国への反応──
はじめに
1.諸概念の説明──均衡化、バンドワゴニング、経済安全保障──
2.先行理論における均衡化とバンドワゴニング
(1)「二面性」と「強弱」の視点の欠如
(2)経済安全保障の影響
3.経済安全保障の視点
(1)経済の戦略的な利用
(2)中国の経済安全保障──貿易の拡大
(3)中国の経済安全保障──人民元エリア
4.台頭国に対する近隣国の反応
(1)「脅威認識」と「抑止の自信」
(2)「連続線」の視点
(3)「誘導」と経済バンドワゴニング
(4)補足説明──経済摩擦、「強制」の利用、軍事的威圧
おわりに

第5章 通商リベラリズムと戦争と平和──経済的相互依存は平和をもたらすのか──
はじめに
1.通商リベラリズム──支持者と批判者──
(1)通商リベラリズムの支持者たち
(2)通商リベラリズムの批判者たち
(3)第3グループ──介在要因の重要性
2.平和にも戦争にもつながりうる経済的相互依存
(1)特恵貿易協定
(2)民主的な政治体制
(3)将来の貿易動向についての予想
(4)現状維持国と修正主義国の経済関係、国内政治体制
(5)攻撃側と防御側の相対的優位性
3.経済安全保障の視点
(1)通商リベラリズムと機会費用のロジック
(2)経済安全保障のロジック
(3)通商リベラリズム、リアリズム、従属論における経済安全保障の欠落
4.3つの補論
(1)第3グループと経済安全保障
(2)核兵器の影響
(3)通商リベラリズムの経済安全保障戦略
おわりに

終章 経済安全保障の含意と将来
1.総括
2.安全保障政策上の含意
3.今後の研究課題