進化経済学の諸潮流
内容紹介
現在の経済理論は主観主義と客観主義の新古典派的な統合をもはや支持していない。過去の社会科学思想史を振り返り問題の整理を行い、さまざまなテーマから論じる。
目次
はしがき
第1章 進化的社会科学のなかでの主観主義と客観主義 八木 紀一郎
1.はじめに
2.社会科学における主観主義と客観主義の純化
3.20世紀経済学における均衡と進化
4.進化経済学における主観主義と客観主義
第Ⅰ部 理論・方法論
第2章 進化経済学における市場理論──相対取引を前提として── 江頭 進
1.はじめに
2.一物一価についての考察
3.モデルの設定
4.シミュレーションの結果とその考察
5.進化経済学における市場理論とは何か
6.おわりに
第3章 制度の経済学的主体とその基礎 荒川 章義
1.新古典派的主体と制度の経済学的主体
2.最適化行動と慣習に基づいた行動
3.プラグマティズムの哲学
4.マルクスの人間観
5.主体批判としての制度の経済学
第4章 「新しい経済学」と進化経済学 小山 友介
1.女王陛下の質問と「新しい経済学」
2.「新しい経済学」と進化経済学
3.「新しい経済学」のモデル観
4.主流派経済学のモデル観──サットンの境界設定アプローチ──
5.パラダイム間の接続可能性
第5章 制度分析における「未解決問題」と
経済実験の有用性 小川 一仁
1.はじめに
2.制度分析における「未解決問題」
3.経済実験の可能性
4.おわりに
第6章 マルクスにおける制度と調整 宇仁 宏幸
1.はじめに
2.市場的調整
3.規 制
4.ヒエラルキー
5.コーディネーション
第Ⅱ部 応用編
第7章 経営者資本主義からファンド資本主義へ──現代資本主義の変貌── 服部 茂幸
1.はじめに──経営者資本主義からファンド資本主義へ──
2.経営者資本主義の崩壊とファンド資本主義の成立
3.ファンド資本主義と資本主義の新しい病
4.おわりに
第8章 法と労使関係の進化──フランス35時間労働法を巡って──
清水 耕一
1.はじめに
2.35時間労働法を巡る政治的アクターの行動と政治的選択
3.右派政権の反35時間労働政策と労使関係
4.おわりに
第9章 携帯電話産業の発展の多様性 廣瀬 弘毅
1.はじめに
2.携帯電話産業の特性
3.政策的方向性
4.ダイナミズムと規制
5.おわりに──進化経済学の視点から──
第10章 国境を越えた対立を引き起こした制度的赤字
──ウルグアイ川周辺のパルプ工場建設に関する対立について── ルイジ・アルベルト・ディマルティノ
1.はじめに
2.国境をまたいだ協力から愛国主義的な立場の支配へ
3.「グアレグアイチュ環境市民集会」(ACAG)
4.中央政府,州政府,市政府の役割について
5.おわりに
第Ⅲ部 学 史
第11章 進化経済学における二つの企業者論──ヴェブレンとシュンペーター── 杭田 俊之
1.はじめに
2.「経済進化」の様式と二つの企業者論
3.企業者の動機,利潤概念,資本概念の検討
4.トラスト化した資本主義における企業者
5.おわりに──企業者論の比較と考察──
第12章 ダーウィニズムをめぐる論争?──ハイエク・今西錦司対談再考── 吉野 裕介
1.はじめに
2.「対談」当時のハイエクと今西
3.ハイエク晩年における進化論的主張
4.今西進化論の概要
5.今西進化論に対するハイエクの応答
6.おわりに──「対談」の意義──
第13章 カルドアの収穫逓増論の源流──ヤングの講義録とLSE時代を踏まえて── 木村 雄一
1.はじめに
2.アリン・ヤングのLSE登場と講義
3.カルドアの収穫逓増論の深化とヤングの影響
4.おわりに
第14章 知識の進化に関する学説史的考察 中村 隆之
1.はじめに
2.アダム・スミス──分業論──
3.リカード──再生産と活動階級──
4.ハイエク──分散した知識の活用──
5.マーシャル──「組織」の力──
6.ケインズ──所有と経営の分離──
7.おわりに──我々は「知識の進化」という問題に,
どのように取り組むべきか──
索 引